ごわ


「天狗」
 晴明が、そっと耳をくすぐるように話した。微笑んでいる。天狗は瞳に彼を映したまま、首を少し傾ける。き
っと、話題を返してくれるだろう。
「晴明。身体を寄せて話したいのか?」
 招きに頷き、庵は安らげると褒めてくれた彼。横たわらず話していたが、夜も更けた。休む備えは互いに不足
ない。並び、眠らせるべきだろうかと思っていたところ、寄り添われた。
「――いや。表情と余裕を見たくてな」
「目に、映せるか?」
 距離を詰め、すぐ傍に移った晴明が囁く。天狗を見つめることは、やめない。眠るつもりはないようだ。天狗
の変化を、嬉しそうに見ている。飽きる様子もないように思う。
 見つめれば、分かるのだろうか。余裕さえも、彼の涼しい瞳は読み取れそうだとは思う。そして、余力が目に
映ったとき、身体は寄せられたままだろうか。
 少し見惚れながら、言葉を聞きたくて待つ。
 しばらく見つめてから、晴明は、微笑み、頷いた。
「体調に変わりもなさそうだ。天狗。ずっと、傍にいられるな」
 体調が悪くないこと、余力。彼に、読み取って貰えたらしい。
 晴明に、寄り添いを返す余裕は、残っている。充分に疲労を癒すことは、ふたりのときでなくて構わない。む
しろ、更に身体を寄せなければと思う。ふたりで過ごせる夜を、逃したくないのだ。
 胸に、身体を預ける彼。離れずにいてくれた。胸に響く幸せを、伝えよう。ゆっくりと、背を愛でる。苦しめ
ぬ程度に、拘束する。
 そして、唇を寄せ、静かに、晴明の口を塞いだ。
 単の帯も、位置は見えずとも掴める。彼の身を包む布を、そっと、掃った。


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