はつ 「天狗、お休み」 夜。泰継は褥が見える場所で、小さく話した。 今から、眠る。一日の疲れを取れれば幸いだ。見えるところにいる彼と、話す。 「ああ。ゆっくり眠ろう、泰継」 褥には寄らず、天狗が頷く。泰継は休むために進む足を止め、笑顔の彼を見つめる。 「天狗は移らないのか?」 今は、癒されるときだ。褥を使えば、きっと嬉しくなる距離で和める。彼のいない褥に意味はない。共に、眠 りたい。 「いや、潜る。だが……泰継。もっと自分を労え」 彼は静かに気持ちを示し、ゆっくりと泰継の傍に歩んだ。そっと、座ってくれる。泰継は、呼吸する。眠る前 に、言葉を聞いてくれると嬉しい。 だが。挨拶は、止まる。肩に、天狗の手が載せられる。 泰継は目を見開く。優しい手に、押された。 抗うことなく、背が褥に沈む。 「眠らせて、くれたのか」 「――もちろん、だ」 良く見える場所で、彼は小さく頷く。静かなとき。泰継は少し惑いつつ、導いてくれた彼に礼の言葉を口にす ると決める。だが。 目を、合わせる。天狗は、今も移らない。彼との距離は、ほぼない。 「てん、ぐ」 泰継は、呟いた。眠らせることが目的ならば、今、姿勢を変えずに見つめる理由はない。 普段のゆとりはない瞳。だが、とても美しい。傍にいてくれる。息を、呑む。 天狗は、接することを願ってくれているのか。 「――悪い」 謝罪が、聞こえる。泰継は距離を取らない。彼に求められることは、嬉しいのだ。 胸の音が、速い。そっと瞼を閉じる。拒まない、と、伝わって欲しい。天狗の呼吸が、聞こえた。刹那。 衣の帯が外されることを、悟った。 |
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