吹き付ける風

 辺りが静かになり、影も少しずつ薄れて行く時刻。
「――風が、強くなって来たな」
 手を翳して強い風を遮りながら、私は隣にいる者に告げた。
「そうだな。晴明、もう帰るか?」
 横に立つ者――天狗が、こちらに視線を向けて尋ねる。
 だが、私は首を横に振った。
「いや。まだ……お前の隣にいる」
 今日は差し迫った任務もないので、彼と過ごそうと思い、北山を訪ねた。もう少し、天狗といる時間を堪能し
たい。
「――そうか」
 彼は驚いたのか少しの間沈黙していたが、すぐに笑顔で頷いてくれた。
 安堵し、私は息を吐く。そのとき、先ほどよりも強く冷たい風を感じた。
 耐え切れぬほどではないが、肌寒い。このようなときは、温もりが欲しくなる。
 私は傍にいる者を見上げ、唇を動かした。
「天狗、そちらに寄っても良いだろうか。少し寒いのだ」
 彼に近付けばきっと体温も上がるだろう。傍に行くことを、許してはくれないだろうか。
「構わんぞ」
 天狗は、答える。  礼を述べるため、口を開こうとした直後。
 彼のほうが、私のもとへと歩み寄っていた。
 先ほどまでとは反対の隣に立ち、視線を私に送る。
「……天狗?」
「風はこちらから来ている。ついでだから、守ってやろうと思ってな」
 私が理由を問おうとしたとき、彼は唇を綻ばせた。
 言葉通り、もう冷たい風はこちらに吹き付けてこない。天狗が、盾になってくれたからだ。
 彼の身体が冷えてしまうかもしれない。だが、優しく頼もしい盾になってくれた天狗の気持ちが嬉しい。
「――ありがとう」
 感謝の言葉を伝えてから、私は彼に抱き付いた。この温もりを与えることで、少しでも天狗を守れたら良い。
 それから。
 ほどなくして、私の身体はたくましい腕に抱きしめられた。


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