興味と差


「晴明、もう起きたらどうだ?」
 自らの膝を枕にして横たわる者に、天狗は、声をかけた。
「お前の温もりは安堵をもたらしてくれる。重いか?」
 晴明はこちらに視線を向け、綺麗な唇を動かした。
 今日、彼はこの庵に泊まって行く。ふたりの時間を作りたくて先日誘ったところ、すぐに受け入れてくれたのだ。
「――別に重くはない。全く困った奴だ、お前は」
 晴明の問いに返答してから、その頬にそっと手を伸ばした。
「……ありがとう」
 彼は呟くと、頭を動かすことなく、静かに目を閉じた。
 夕餉も食べ終え、くつろぐことの出来る時間。晴明はこの膝に頭を預け、身体を休めることを選んだ。
 彼に頼られることを、嬉しく思わないはずがない。
「――お前は、種族の差すら乗り越えて、儂を夢中にさせた。拒むことなど出来るものか」
 安らかに瞼を閉じている晴明を見ていると、愛しさが込み上げて来る。
 初めて逢ったとき、彼は妖である自分にも笑って近づいて来た。その頃から興味はあったのだが、このように想
う日が来るとは予想していなかったのだ。彼は、異種族の友だと思っていたから。
 だが、いつの間にかそれでは足りないと感じるようになっていたのだ。笑顔の下にある、本当の晴明を知
る度に、想いは膨らんで行った。他の天狗族から不審に思われても、ずっと彼の傍にいることが一番の幸せなのだ
と、気付いたのだ。
 異種族の晴明をこれほど強く想う日が来るとは、全く面白い。長生きはしてみるものだ。
「それは――お前も同じだ。私はいつも、お前の虜だということを、分かって欲しい」
 彼はそっと目を開けると、真っ直ぐにこちらを見た。
 瞳の奥には、確かな熱が宿っている。
 もちろん分かっている、と答えてから、その唇を自分のそれで素早く塞いだ。


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