つつ


 泰明は、目を瞼で塞いだ。不安と、恐ろしさに。
「……泰明」
 晴明が、きっと困っている。胸は、痛む。だが、ふたりの距離が消える際、不安も訪れるのだ。
 師と、過ごせる夜。無論、嬉しい。だが、きっと晴明の目に見苦しい姿を映してしまう。
「すみま、せん」
 呼吸の苦しさは、言葉を阻害した。ずっと変わらずにいれば、きっと呆れられてしまう。
 だが。
「案ずるな」
 優しい言葉に、目を塞ぐことをやめる。師は、普段と変わらぬ微笑みを浮かべていた。
 そして、ゆっくりと晴明の腕が泰明を拘束する。
 胸が壊れそうだが、不安より、嬉しさが勝っていた。
「――お師匠」
 美しい胸を見つめながら、呟く。目は、師しか映さない。呼吸も普段より苦しいが、傍にいられるので嬉しさ
も訪れていた。
 晴明が、一歩身体を寄せる。胸の痛みは強まったが、拒みたくないと思った。避けることは、きっと、苦し
い。
 そして、言葉が聞こえた。
「優しさを見せ、更に忍び寄る。私を、非難するか?」
 師は、少し不安なのかもしれない。身を委ねさせる術を、きっと分かっているのだろう。術を駆使したことが
卑怯だと、嘲笑しているのかもしれない。
 だが。
「――抗えないことも、私の幸せです」
 そっと首を横に振り、晴明に意思を表す。ゆっくり不安を消せて、嬉しかった。師を、見つめたい。もし見苦
しくとも、晴明の傍にいることが幸せなのだ。
 拘束が、消える。そして、穏やかに笑う師を見つめたとき。
 唇が寄せられ、目を瞼で塞いだ。そして、優しい人に、唇が、愛でられる。
 泰明を包む布は、ゆっくりと、師の手が、取り去った。


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