強すぎるほどの

「――天狗」
「何だ、晴明」
 私の呼び声に答え、隣の円座に座っていた者は視線をこちらに向けた。
 強さの中に優しさの宿る瞳が、私の胸を照らしてくれる。
 天狗にも指摘されることがあるが、私は本心を隠すことが得意だ。しかし彼の傍にいると、いつも素直な想いが
溢れ出して来る。お前の考えは読めない、と天狗は良く言うが、それは恐らく誤解だ。
 どのようなときも、彼への感情だけは顔に表れていると思うのだ。他の気持ちを全て胸の奥にしまうことが出来
たとしても、天狗への想いはきっと秘められない。
 しかし、彼が私を嫌悪していたら、この想いはひとりで抱えなければならないだろう。そうなったら、私は正気で
いられない。決して届かない気持ちを抱き続けるのは、想像も出来ないほど辛いはずだ。
 だが、天狗はこの想いを全て受け入れてくれている。私が日の高い内から彼の庵にいられるのも、天狗が拒ま
ずにいてくれるからだ。
 そして。自惚れでなければ、彼も私に優しい気持ちを抱いてくれていると思うのだ。天狗の双眸には、柔らかな
光がある。
「――ありがとう」
 私は、呟くように告げた。強すぎるほどの想いを受け止めてくれていること、そして何よりも、私を愛してくれて
いることに、感謝しているのだ。このような言葉では、足りないほどに。
 彼は少し驚いたようだったが、すぐに微笑んで頷いてくれた。
 私も、天狗の気持ちは全て受け入れたい。
 そう思いながら、私は少しだけ、彼に近付いた。


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